『リベリオン』

基本情報

リベリオン
(EQUILIBRIUM)
2002/CS
(2003/4/5 京極弥生座1)

感想(旧HPより転載)

 第三次世界大戦により荒廃した未来世界、生き残った人々は人間を闘争に駆り立てる人間の”感情”を薬品によって抑制することで全体国家を築き上げたファーザーによって支配されていた。その感情規制体制を守護する尖兵として、銃器と東洋武術を融合させたガン=カタと呼ばれる究極の戦闘術を会得したクラリックが組織されていたが、その中のエリートである主人公(クリスチャン・ベール)は、都市外縁の廃墟に巣くい、感情の自由を求める反乱者たちに感化された相棒を何の迷いもなく射殺する。しかし、反乱者たちを追い続けるうち、自分自身も徐々に内に秘めた感情世界が発露してゆくのに気づいてゆき・・・

 明らかに「マトリックス」の亜流を狙ったスタイリッシュなSFアクションで、予算規模的にはB級映画なのだが、近年のデジタル技術の進展のおかげで、スペクタクルなスケール感を獲得している。監督カート・ウィマー自身による脚本は細部にハリウッドメジャーのルーチンから距離を保とうとする意図が見え隠れしているが、捻りもよく効いたアクション映画らしいアクション映画に仕上がっており、予想以上に健闘している。

 しかし、なんといってもこの映画の最大の見ものは、この映画のために創出されたガン=カタという武闘術の斬新さに尽きるだろう。もちろん、「マトリックス」以来のハリウッドでのカンフーブームに便乗しつつ、「男たちの挽歌」等でチョウ・ユンファが見せた香港式ガンアクションを取り入れて、独特な融合を施したという由来は誰の目にも明らかなのだが、実際に映画で描かれるそのアクションのあり様は、そうした観客の予想をはるかに上回る破壊力を有している。しかも、曰くありげなガン=カタを小出しにしながら全面披露をクライマックスまで引き伸ばす演出が抜群のサスペンスを生み出して、ラストのカタルシスを絶対なものにしているあたり、この新鋭監督の戦略はなかなか的確なものだ。

 このガン=カタのユニークさは是非とも映画館のスクリーンで確認してほしいのだが、そのアクション構成にはおそらくあの世界一横着なアクションスターであるスティーブン・セガールの拳法も取り入れられていると見たのだが、そのバカバカしさと華麗さはちょっとした事件といってもいいくらいだ。

 おまけに、感情というものからもっとも縁遠い風貌を生かしきったクリスチャン・ベールの最後の殴り込みが、三池崇史の「不動」における竹内力、あるいは松本正志の「狼の紋章」における松田優作を髣髴させる白の詰襟の衣装というスタイリッシュな拘り方にもこの監督の特異性が刻印されているだろう。

 ただ、主人公の感情を呼び覚ましてゆく重要な役どころを演じるのがエイミー・ワトソンであったり、悪の首魁を演じる俳優にまったくカリスマ性が感じられなかったりと、キャスティングでB級映画の弱さが表れているのが、残念。

 何はともあれ、ガン=カタにハマレ!



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