『容疑者』

容疑者
(CITY BY THE SEA)
2002/CS
(2002/10/12 京極東宝2)

感想(旧HPより転載)

 かつては保養地として栄えたが今は見る影もなく寂れた海辺の町を舞台に、麻薬の売人を殺して行方を眩ました容疑者が昔捨てた息子と知った刑事(ロバート・デ・ニーロ)が彼の行方を追うが、そのうち警官が犠牲になる第二の殺人事件が発生する。刑事は警察全体を敵にまわして息子を救い出そうとするが・・・

 シネマスコープの余白を巧く使って寂れて荒んだ海辺の町の情景を心象風景としてドラッグに溺れる息子の心理描写を積み重ねたカール・ウォルター・リンデンローブのキャメラワークが秀逸で、「スパイダーマン」に続いてナイーブな青年役を好演するジェイムズ・フランコが時折「理由なき反抗」のジェームス・ディーンの面影を湛えるあたりは、マイケル・ケイトン・ジョーンズ監督の狙い澄ました演出意図なのだろう。

 実話に基づくこの物語は父親に捨てられて道に迷った青年の彷徨と死刑囚の父親を持つ初老の刑事が息子との関係を修復しようとするドラマを紡ぎ合わせたものだが、青年の彷徨の部分をもう少し膨らませることができたら、もっと胸に突き刺さる映画になっただろう。

 近年は演技的な野心作よりもウェルメイドな作品に途切れることなく出演し、映画に余裕の太鼓判を押すことを自らの使命と心得たフシのあるデ・ニーロはここでもやりすぎず、不足もない演技で、観る者すべてを心地よく納得させてしまう。「タクシードライバー」や「ゴッドファーザーPART2」「レイジング・ブル」等の張りつめた役作りはもちろん凄いのだが、最近の弛緩したデ・ニーロは本当に素敵だ。

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