『陽はまた昇る』

基本情報

陽はまた昇る
2002/VV
(2002/7/7 MOVIX京都/SC2)
原作/佐藤正明 脚本/西岡琢也佐々部清
撮影/木村大作 照明/磯野雅宏
美術/福澤勝広,新田隆之 音楽/大島ミチル
監督/佐々部清

感想(旧HPより転載)

 ビクター横浜工場でお荷物となっているビデオ開発部の部長に左遷された叩き上げの技術屋(西田敏行)はエリートの副部長(渡辺謙)とともに、独自規格のビデオ開発に乗りだし、ソニーのベータマックス開発に遅れをとりながらもVHSの開発に成功する。さらに各メーカーにモデル機を公開してまで、VHSを共通規格とするため奮闘するが、ベータ方式への規格統一を促す通産省の行政指導のもと、VHS方式は苦戦を強いられるのだった。その時副部長が提案した起死回生の切り札とは・・・

 おそらく社会人なら誰しも思い当たり、身につまされるエピソードの一つや二つは必ずあるはずの大人向け映画で、降旗康男が演出したといっても通用するほど老成した新人監督佐々部清の手腕はなかなか確かなものだし、ベテラン西岡琢也の脚本も十分よくできている。ただ、ラスト辺りの湿っぽいエピソードのだめ押しは蛇足で、せっかく調子の上がっていた中盤の巧いエピソードが大分相殺されてしまっている。この部分はもっとすっきりとした幕切れを用意すべきだったのに。

 例えば、西田がVHSの仕様を全て公開すると技術者たちに明かす場面の長回しや、大阪に向かう車中での男同士の会話の場面など脚本も、演出にも力がこもった見応えのあるシーンが続いて傑作の予感に胸を奮わせていたのに、あのラストにはさすがに赤面する。まあ、如何にも東映的にわかりやすいのはいいことだが。

 ところで木村大作キャメラだが、望遠で手持ちキャメラふうにわざと自然な感じで揺らしてみせる狙いの場面で実に不細工なキャメラワークを見せて、遂に木村大作の時代も終わったことを強く印象づける。もっとも、当劇場でもずっと指摘し続けてきたように、実際のところ木村大作の時代はとうに終わっていたのだが。

 社長が夏八木勲で、重役が石橋蓮司と津賀山正種というビクターという会社も不安が一杯だし、下請け業者代表の井川比佐志の会社は社員の顔が見えないし、という状態からも明らかなように相当低予算な映画で、映像的な充実度についても一方の原田真人の映画とは比較にならないのだが、東映にはこのレベルの映画を量産してもらわないと困るのは確かだ。

 ただ、最大の不満は木村大作が撮影しているのに、本田博太郎が出ていないことだ。国村隼の役は本田博太郎のはずだよね。

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