感想(旧HPより転載)
荒っぽいトラックの運転手(北大路欣哉)はたまたま診察して貰った診療所で白血病と判明する。白血病の研究を進めようとする医師(平幹二郎)は彼の身を案じる看護婦(星由里子)を遣わして病院を嫌う彼を呼び寄せようとするが、二人は急速に恋におちてゆく。生きているうちに何かを成し遂げようとする彼は病身を押して道路工事に出かけるが、遂に看護婦に見届けられながら末期の時を迎える。
という典型的な難病ものなのだが、松山善三の作家の業というべきか、異形の細部が甘美な物語を異色に染め上げる。
運転手の白血病の原因がビキニ環礁付近でのマグロ漁のせいだと無理矢理こじつけて、あんな綺麗な海に毒があるなんて・・・と呟きながら息を引き取ったり、運転手の親友(田中邦衛)の妹(いしだあゆみ)がカリエスで動くこともままならず恋もできないことの怨念を醜悪なまでに執拗に描き込み、ついには服毒自殺してしまうエピソードを主人公と対比させるために用意して、ほとんど嗜虐的ともいえるほど必要以上に彼女を追いつめてみたり、豊田四郎の単なる青春映画にさせまいとする意欲の表れか、作者の性格の歪みか判別つきかねるゆゆしき事態に達しており、一種の怪作と呼ぶのが相応しい作品となっている。
そういえば、同時期に松山善三は「その人は昔」(撮影は岡崎宏三!)という舟木一夫、内藤洋子共演の青春映画でも相当壊れていたと思うのだが、激しい政治の季節に取り残されていたということか。
老巨匠豊田四郎の映画とは思えないほどカットが切り替わり、岡崎宏三のキャメラワークも縦横無尽の動きを見せる。特に帰郷する看護婦の乗った列車を追ってトラックで併走する様をドキュメンタルに熱く捉えたシーンはやはり見物といえるだろう。しかし、同じようなシーンが「あの人は昔」にもあったような気がするのだが・・・
運転手が息を引き取るラストで星由里子がヌードを披露するのだが、当然の事ながら激しい(美しい?)逆光の中で、何ら不都合なものは見えはしないし、特に見たいとも思わない。確かに当時の星由里子としては、熱演といえるだろうが、むしろ「ゴジラ×メガギラス」で収まって科学者を演じている彼女の方が、よほどその個性に相応しいように思える。
それにしても、ここでのいしだあゆみの凶々しさは一体何だったのだろう?