感想(旧HPより転載)
”どら平太”と異名をとる新任奉行が悪の巣窟と化した濠外を一掃するために自ら進んで法律や規則を無視して違法捜査を繰り広げる。
と書いてしまうと、なんだかほとんどダーティ・ハリーだが、実質は「椿三十郎」の世界で、黒澤明のモチーフが最も強く現れている。そもそも黒澤明がひとりで書き始めていたものに他の3人が後から加わったものらしいから、当然といえば当然。
しかし、市川崑の演出としてももはや出涸らし状態だし、脚本自体もかなり怪しい。なにしろ、濠外の大親分がころっとどら平太に惚れ込んでしまう展開もかなり無理だし、どら平太の捜査プロセス自体もほとんど工夫がないために、中盤は作劇的に相当スカスカだ。おまけに、汚職の黒幕なんて見え見えだし、脚本的にはちっとも冴えない。
キャストも酷く、ゲスト出演の岸田今日子ももう終わってしまっているし、大滝秀治なんてただ危ないだけじゃないか。笑っていいのかどうか迷うような役者を使うなよ。片岡鶴太郎なんて映画館で観たくないし。
その点、端役ながら本田博太郎は的確に役を遊んで働き盛りの役者の余裕を垣間見せてくれるから安心してニコニコしていられるし、加藤武はまだまだバリバリの現役で相変わらず芝居の質が軽いのが嬉しいし、久しぶりの三谷昇は怪しさが加速してヤバイくらいだ。
正直言って、五十畑幸勇のような正統派のキャメラマンが今の市川組でしか撮影しないというのはもったいない話だし、せっかくの西岡善信の美術も予算規模の小ささゆえに冴えない。
でも、役所広司と藩の重役達とのやり取りの痛快な展開には黒澤明や小林正樹の傑作群の話術の片鱗が見え隠れしてそれなりに嬉しい気持ちになってしまうから、困ったものだ。
(2000/5/13 ビスタサイズ 京都宝塚)
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