『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』

基本情報

残酷・異常・虐待物語 元禄女系図
1969/シネマスコープ
(2000/3/11 京極弥生座1)
 
脚本・掛札昌裕石井輝男
撮影・吉田貞次 照明・中山治雄
美術・鈴木孝俊 音楽・八木正生
監督・石井輝男

感想(旧HPより転載)

 お馴染み(?)石井輝男の異常性愛路線の1本で、「徳川いれずみ師・責め地獄」や「恐怖奇形人間」と比べると多少地味(?)ながら、今観ても十分すぎるほど狂った映画で、石井輝男の異才ぶりを遺憾なく堪能できる過激作だ。

 女系図というタイトルどおり、異常な運命に翻弄される元禄の女達の姿を激しく活写して、メロドラマ的に締めくくるという無茶な企みが、ある意味で部分的には増村保造的な成功を収めているから、単なるバカ映画として片づけるにはもったいない力作である。

 第一話は街のごろつきに騙されて吉原に叩き売られて遣り手婆たちに責め殺されながら、それでも騙した男を一途に思い続ける哀れな女の姿を案外ストレートにメロドラマ化した小品。

 第二話は火傷で片目の潰れた醜い男から少女時代に受けた陵辱がもとで、異形の男との異常性欲に取りつかれた大店の娘と彼女に想いを寄せる奉公人との過激な愛の形を谷崎潤一郎的に綴った秀作で、娘の猟色を戒めるとともに、自分の愛を受け入れさせるために自らの顔面に焼きゴテを当てる石浜朗の姿には、ほとんど増村保造のメロドラマを観ているような錯覚に襲われる。

 特に出色なのは、娘を性的に弄び続けたグロテスクな男(沢彰謙)が娘の行方を探っていた火消し衆に小屋から引きずり出されて袋叩きにされるシーンで、ちょっと泣ける。

 いつもながらのマゾ演技に磨きの掛かった石浜朗ははまり役だが、主演の葵三津子が意外の好演で、このエピソードなら長編映画として十分通用するだろう。まあ、ほとんどロマンポルノを完全に先取りした映画だが、なにしろ撮影、美術、照明の主要スタッフは内田吐夢のメインスタッフだから、ポルノにしては贅沢すぎるほどの布陣だ。もっとも、予算規模は最低ラインに違いないが。

 第三話がもっとも石井輝男らしいこれ以上ないほどに狂った物語で、さすがに唖然としながら、あまりのことに感動すら覚える豪快作。

 「変えてやる、何もかも」と意味ありげに叫びながら腰元達を牛に突かせて殺しては興奮しているサディストの殿様(おなじみ小池朝雄)に金粉責めにされて辱めを受けた正室賀川雪絵)が、殿が寵愛するマゾの腰元が殿の実子であり、手のものに命じてマゾとして調教して送り込んだものであることを明かし、「畜生腹の子は人か化け物か、見とうはございませんか」と焚き付けたものだから、さあ大変という、あまりといえばあまりの展開にのけぞり続ける大団円を迎える。奇想の人、掛札昌裕石井輝男も完全に悪のりしすぎだ。

 しかし、「マグノリア」のトム・クルーズばりにノリノリの小池朝雄は役者の業だから仕方ないが、一見クールながらしっかり狂っている吉田輝雄の眼が一番怖い地獄絵図。このエピソードについては「徳川いれずみ師・責め地獄」よりも狂っていると断言できる。

 エロもグロも、何事もとことんまで突き詰めれば清々しい感動に昇華することができるという教訓を石井輝男に教えられる不思議。

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