THE RAVEN

大鴉(THE RAVEN)
1963 スタンダードサイズ(トリミング版)
(98/12/16 V)

感想(旧HPより転載)

亡き妻の霊魂が大魔術師(ボリス・カーロフ)の魔術で生き続けていることを知らされた魔術師(ビンセント・プライス)は、大魔術師に敗れて鴉に変えられていたピーター・ローレを連れて城に潜入する。ところが、実は妻は生きており、自らビンセント・プライスを捨てて大魔術師に乗り換えたことを知らされ、大魔術師と魔術合戦を繰り広げることになる。

 大魔術師の古城に舞台が移ってからの後半があまりはかばかしくないのは、ボリス・カーロフの演技に生彩がないためではないだろうか。その証拠に、ビンセント・プライスとピーター・ローレの軽妙な掛け合いが冴える前半部分は、コメディとAIP怪奇映画の舞台装置が生み出す陰鬱さがアンバランスな楽しさを湛えている。

 ピーター・ローレの息子役が若き日のジャック・ニコルソンで、大魔術師の遠隔魔術に操られて狂ったように馬車を駆る表情は「ウルフ」そのままである。たしかに、ロジャー・コーマンのもとで3人の怪奇映画スターと堂々の競演を果たしているわけだから、極めて正統派の怪奇映画スターでもあったわけだ。「恋愛小説家」が様にならないのも、無理はない。

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